カムリの初恋

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カムリは幼い頃からムーン・ビーストに乗りふけっていた。 理由は………………殺す為。 いつの間にか夜、眠れなくなってしまっていた。それは両親が死んでしまってから。両親が死んでからカムリは一睡もできなくなっていた。 理由は………………分からない。 二つの理由からカムリは幼い頃から大人の兵隊相手に、MBで戦い、自己欺瞞をしながら、鬱憤を晴らしていた。大人は弱すぎる…。 幼いカムリは笑った。夜間、逗留中の兵隊を狙って、逃げ惑う兵士共を皆殺しにした。まだMB操縦を覚えたてのカムリが何故そんな事が出来たのか? 一つ目の要因は天賦の才能によるよのだった。 幼い頃、年少組のMB仮訓練の際、少し乗り方を教えられた時、その操縦方法を一度で丸暗記してしまっていた。 そこで既に、誰にも教わらないのに、独学で戦い方を考案し、大人相手でも引けを取らないレベルまで、夜間の戦闘で己を鍛えあげた事だった。 二つ目の要因は夜目が異様に効く事だった。 夜間、両親が死んでしまった時から夜を暗いとも思わなくなってしまった。朝も昼も夜もどんな場所でも、暗いという概念が無くなってしまった。夜間、キャッチボールをしてもまるで平気だった。 この一見すると些細な特異体質が、カムリの夜間戦闘に絶大なアドバンテージを及ぼした。 ムーン・ビーストは月晶石でできていると言っても過言ではない。 この 月晶石はムーン・ビーストの動力部や身体に使用され、人間の月食力を触媒に駆動する。 月食力によって駆動した月晶石は夜、蛍光塗料の様に緑に発色する弱点がある。 これがいけなかった。カムリは自らの機体にマーカーで黒く塗り潰し、逗留中の兵士の乗るムーン・ビーストに突貫する。 発光する敵のムーン・ビーストはカムリの黒くマーカーで塗りつぶしたムーン・ビーストに何者から攻撃されたのかも分からず、なす術もなく蹂躙されてしまう。 種明かしはこうだ。夜目の効くカムリが真っ黒にした機体で敵の夜間光ったムーン・ビーストを餌食にさせる。夜目が効くカムリは夜、目が全く見えない敵兵がまるで歯が立たない。 というのが全貌だ。 二つの才を悪魔がプレゼントした。カムリは幼くして兵隊を二桁の後半位は殺していた。 理由は嘘が嫌いだから。国を守るとか抜かして平気で人を殺している、矛盾した嘘つきが大嫌いだったからだ。
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