カムリの初恋

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「お母さんがね、悪い人にはいつか必ずバチが当たるんだって。だからこの人達にもバチが当たったんだ。ありがとうお兄ちゃん!」 俺に向かって言っているのか?カムリは逆上した。 「お前はオレに謝れって言っているんだな?このオレが嘘つきだって言いたいんだな?」 「どうしたの…?お兄ちゃん。」 「オレは人殺しで最低なただのダメ人間だって事を告白しろっつってんだな?オレに嫌がらせしてんだな?」 困惑する少女。しかし冷静に何故カムリが怒っているのか加味してみる。そこで弾き出された答えは 「お兄ちゃんは多分お父さんも殺しちゃったんだよね?」 「!?」 「でもお兄ちゃんは私のテーソーを救ってくれたじゃない?」 「黙れ!」 「それは多分お兄ちゃんにしか出来なかった事なんだよ。だからお父さんには私は救えなかった。」 「……。」 「お兄ちゃん。好きだよ。私はお兄ちゃんに出会って今一番幸せ。二人でどこか遠くに行って二人だけで暮らさない?」 「ばっ!馬鹿!」 「私をお嫁さんにして?お兄ちゃん。」 「嘘をつくな。お前を殺すぞ!」 「殺されてもいいの。誰かを好きだと思う事はその人の為に死んでも良いと思える事だってお母さんが言ってたんだ。」 「嘘をつくな…。嘘をつくな…。」 「私の名前はファリス・今日よ。ファリス・きょ…。」 「!?。」 ぱらららら、サブマシンガンが火を吹いた。 それは弟の名前だ!最後の最後にオレに嘘をついたな! 少年は何の罪も無い少女の命を奪った。 「お兄…ちゃん。わ…たし…しあ…わ…せ…。」 涙が溢れだしてきた。犯した罪の重さに気づいた所で、過去には帰れなかった。 「ぐすっ。クソっ!ちくしょう…。ああああああ…!」 この喪失感は少年にとっての初めてのリアルだった。カムリが生まれて初めて奪った、価値ある命だった。 モザイクのとれた少年はこの日を境に、命に対して向き合う努力をする。
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