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その機体はコボルデでもウェアウルフェンでもなかった。両機とも顔の容貌が醜い獣人の仕様、泣き叫ぶ狼になっているが、前方の敵は違った。
全身真っ黒で塗り固められ、タイトで鋭い刃の様な爪で武装し、顔の部分だけ白く表情がのっぺらぼうだった。
腕組みをし、細い身体だ一歩一歩近づいてくる。カムリを森の茂みに隠した。
特機か!ファリスは唾を飲んだ。国内に流通している汎用性のある機体と違い、明らかに違う機体を特機と言う。
そのパイロットだけに造られた特別な機体。主に指揮官が使う、畏怖の念を込められた機体。腕に自信のある人間に造られた、憧れの機体を指す。
つまり特機=強者という図式が成り立つ。ファリスはデビュー戦で自身を呪いたい衝動にかられた。が…今はそんな事言ってる場合じゃ…、
漆黒の機体が急スピードを出した。間髪挟まず、休符の後の音符の様にファリスのロンリネスウルフに迫る。鋭いクローでロンリネスウルフのコックピットを貫く。
がファリスも自慢のディフェンスとフットワークで敵の攻撃を手の甲でガードする。
速い…。敵への最初の印象はスピードだった。その速さは、カムリを凌いだ。
機体の差が有るが、今まで経験して来た中で最速の速さだった。そのままの連撃がファリスのロンリネスウルフを襲う。
上下にクローで膝と胸部を狙われた。高速ワンツーパンチの何乗もの手数で攻撃をされる。膝関節を曲げ、きょうぶを左手の甲で防御すると、ファリスは負けじと果敢にスピードに対抗していった。
ワンツーパンチのワンとツーの間に間髪入れず機体の顎を狙ったアッパーをかます。敵が怯み体勢を崩すと、今度はファリスの連携技が相手を襲った。
左脚でミドルキックを胴体にかますと、右腕で敵の顔面に巨爪を突き立ててフックを喰らわせる、
が、並みの相手なら地面に身体をつけているが、敵の月食力が高いのかビクともしなかった。ここでもファリスの特性が仇をなした。まるで紙切れ。
敵の攻撃、今度はコックピットを狙い先程と同じ連撃。
速い…。このスピードが続けばいつか捌ききれずに喰らってしまう。
一度喰らえば、そこを基点に何発も喰らい、いつしかコックピットにまで迫ってしまう。単調だが、自分がミスをすれば死ぬ。これが多分敵の攻撃スタイルなんだ。
無駄な攻めは好まず、一番効率の良いコックピットねらい。
ファリスは考えた。
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