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言葉に出して、文さんの言っていた覚悟を決める。
ゴクリと唾を飲み込んで、私は一縷の望みにかけるように門を潜った。
――その瞬間、目の前の景色はガラリと変わった。
重厚感あるオーク材のテーブルと、赤い座面の椅子がいくつか並んでいる薄暗い店内。席の天井からステンドガラスような照明傘が吊り下げられていて、暖色の灯りをともしている。
蓄音機の褪せたゴールドのホーンから流れるのは、クラシック音楽。昭和にタイムスリップしたようなレトロな空間がそこにはあった。
「なっ……なに!? ここは、なに!?」
それ以外の言葉が出てこない。困惑と疑問が竜巻のように頭の中でぐるぐるとしていて、ついには私までその場で回転してしまう。
鳥居の向こうには、何の変哲もない道が続いていたはずだった。なのに、私はどうして喫茶店の中にいるんだろう。
これはまた、おかしな夢を見ているに違いない。
そう思うのは最近、暗闇の中で道を隔てている岩に『お願いだから追いかけてこないで』と叫ぶ、カオスな夢を繰り返し見ているからだ。
「仕事辞めて、ほっとしたから? 看護師って精神的に病む人が多いってよく言うし、病気って気を抜いたときが一番怖いのよね」
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