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「黄泉の国の食べ物を食べることを共食(きょうしょく)というが、これは死者が黄泉の国の住人になるための儀式と同じだ。だから死者に出された料理は食べるな」
念を押す那岐さんの鋭い眼差しの中には気遣いが垣間見える……気がする、たぶん。
一応は心配してくれているみたいだ。表情からは、伝わってこないけれど。
「もし食べたら、どうなるんです?」
恐る恐る尋ねれば、那岐さんの視線はさらに鋭利さを増す。
「晴れて、お前も死者の仲間入りだ。この喫茶店から出られなくなる」
「いや、そんなおめでたいみたいな言い方されても困ります」
からかわれているのか、脅されているのか、彼は無表情なうえに無抑揚だから感情が読み取れない。
とにもかくにも、これから自分が行おうとしていることがどれだけの危険を伴うのか、うっすらとだが実感した。
「ちなみに一時間以内に食べ終わらないと、黄泉から来た幽霊も帰れなくなる」
那岐さんは腕を組みながら、重く言い放った。
「え、幽霊もですか?」
「魂は輪廻のときを待つ間、黄泉の国に保管される。だが、輪廻のときがきても黄泉の国にいなければ、生まれ変わることもできない」
「……でも、それって、ずっと一緒にいられるってことですよね」
茜といられるなら一緒にこの場所に囚われてもいいなんて、そんな考えが頭を過った。
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