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そんなとき、私の心を見透かしたように那岐さんは言う。
「お前が会いたい相手も黄泉の国に帰れないどころか、永劫に転生ができなくなる。だから、どんなに離れたくなくても決まりは破るな」
「茜が……生まれ変われなくなる……」
私の願望が茜の未来を奪うかもしれない。そんなこと、私の一存で決めていいことじゃない。
できるならずっと一緒にいたけれど、茜の幸せを思えば、決まりは絶対に守らなくちゃいけないことだってわかる。
私が茜と会えるのは一時間だけ。少ないけれど、私にとっては奇跡のような時間だ。
あの日みたいに一方的に自分の意見を押しつけるんじゃなく、茜の気持ちをちゃんと聞いてあげたい。
そう思っていると、那岐さんの視線が私からずれる。
「現に帰れなかった人間と幽霊がいるからな」
終わったとばかり思っていた話は信じられない方向に進んで、私は「え?」と那岐さんの顔を凝視する。でも彼は、私の隣にいる水月くんを見ていた。
「いい例がここにいるよ」
那岐さんの視線に気づいて、水月くんが苦笑しながら手を挙げた。
「六年前、俺は弟の陽太を呼び出した。でも、ずっと一緒にいたいからって傲慢な理由で、あいつの分の料理を食べたんだ」
「えっ、でも……それじゃあ水月くんは……」
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