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「うるさいな。というか、食べてるときくらい携帯いじるのやめなよ」
二十三歳である私とふたつ違いの茜は最近、携帯アプリのリズムゲームにハマっている。
一日一回ログインしなければ利用券がもらえないだの、今はイベント中だから手が離せないだの、まるで仕事であるかのように分刻みでゲームをしていた。
現に「ゲームしないと」が口癖で、義務感に囚われているところを見ると、妹は二十四時間三六五日、携帯という魔物に支配されている。
「一緒にご飯を食べに来てるのに、感じ悪いよ」
こうして食事中の携帯の使用について注意するのは、何度目だろう。言ったところで、「うるさいな」くらいにしか思っていないんだろうな。
私だって、できることなら注意なんてしたくない。この会話になると妹は決まって不機嫌になるから、こっちも嫌な気分になるし、面倒なのだ。
「母親面しないでよ」
予想を裏切らず、茜は唇をへの字にして文句をたれると、やけくそにオムライスを頬張る。こうなったら、小一時間は口をきいてくれなかったりする。
うちは小学生のときに両親が離婚していて、シングルマザーの家庭で育った。働きに出る母の代わりに、家事をするのは私の担当。
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