▼一話 食べかけのトマトスープオムライス

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もちろん妹の勉強を見るのも、進路面談に参加するのも私だったので、いつしか姉妹というよりは彼女の母親代わりのつもりになっていたのだと思う。 「心配にもなるでしょ。あんたは二十歳になってもバイトで、進学もしなかった。雑貨屋で働くなんて、歳とったら無理だからね」  そう、茜はおしゃれをしたいからという軽率な理由で雑貨屋でバイトしている。 勉強も嫌い、仕事も三ヶ月ペースで変わる飽きっぽい性格。先が見えていないから『おばさんになったらスーパーのレジ打ちでもするよ』と言って、私の話を流す。 言っておくが、スーパーのレジ打ちではひとりで生きていけるだけの給料を稼げない。 家の家賃、光熱費にいくらかかっているかなんて、実家暮らしなのにお金を入れてくれるわけでもない彼女には想像すらできていないのだろう。 「雑貨屋でもしっかり社員になって働くとかならわかるけど、店長にはなりたくない、なにも考えない仕事がいいなんて、そんな仕事ないからね」  茜が鬱陶しそうにしているのは気づいていたが、この話をしだすとどうも止まらなくなる。 本人に危機感はないが、母も四十七歳と高齢なのでそろそろ自立してもらわないと困るのだ。     
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