誰にも渡さない

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 どれくらいそうしていたのかわからない。  やっと汗ばむ肌を離した時、美紅の大きな瞳には涙が溜まっていた。 「ごめ・・・ん。抑えが効かなかった・・・」 「・・・大丈夫」  ゆるゆると首を振ってその瞳が閉じられると、ポロリと雫が転がり落ちる。 「でも、泣いてる」 「うん・・・。どうしてかな・・・わかんない」  泣き笑いのようになったその顔を両手で包み込んで眦に溜まる涙を吸うと、しょっぱいはずのそれはなぜだかすごく甘かった。  乱れた髪をそっと手で梳いて額にもう一度軽くキスをする。ゆっくりと顔を離すとまっすぐに見つめてくる視線とぶつかった。 「淳見くん・・・」 「ん?」 「・・・好き・・・」  ポツリと言って俺の胸に顔を埋めるその仕草に幸福感がこみ上げた。
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