誰にも渡さない

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 美紅の声を十分に身体に取り込んだら今度は俺の番。 「美紅・・・」  愛おしさをその二文字に込める。  大切な、大切な二文字。  美紅の口で他の男の名前を呼ばせたくないように、他の男にこの名前を口にすることもさせたくない。  こんなことを言ったら笑われるかも知れないけど、本当は竜が美紅を名前で呼ぶことも気に入らない。  竜は基本的に気に入った女子は名前で呼ぶ。美紅のことだって転校初日からそうだったし、そのころはまだ俺たちは付き合い始めていなかったうえに一足先に出会っていることを隠していたから仕方ない。  でも。  やっぱり。  例え「ちゃん」が付いていたとしても嫌なんだ。  だから。 「・・・美紅・・・」  何度でも何度でも呼ぶ。  他の誰の言葉も入る余地がないくらいに、美紅のすべてを俺で満たすために。
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