誰にも渡さない

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「ホントに、いいのか?」  やっぱり掠れてしまう声で問いかけると、美紅はコクリと頷く。  もう止まらない。  唇を合わせ、指を絡め、身体も心もすべてを繋いでいく。  出来るだけ優しく。  出来るだけゆっくり。  そう思うけど、ずっと求めていたものを手に入れた喜びが抑え切れなくて、歯止めがきかなくなる。 「あつ・・・み、く・・・ん」 「っ・・・み、く・・・」  爪がくい込むほどに俺の腕を握りしめる美紅が乱れた呼吸の中で呼ぶ俺の名前と、押し寄せる衝動の中で無意識に俺の口をついて出る美紅の名前が重なる。  重なる二つの音が耳の奥でこだまして頭の中が真っ白になる。  好きだ。  好きだ。  好きだ・・・。  その想いだけが俺を支配した。
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