68人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
甘い失恋
「いままでお世話になりました。
ありがとうございました」
あたまを下げると拍手が起きた。
渡された花束を受け取り、職場をあとにする。
今日、私は二年間勤めた派遣先との契約を終えた。
「大変そうだな」
めり込みそうなほどの荷物を肩にかけ、どうにかもらった花束を抱えてエレベーターを待っていたら、梅原課長が私と並んで立った。
「持つよ」
くいっとシルバーの眼鏡を押し上げ、梅原課長は私の腕からトートバッグを取った。
「ありがとうございます」
「いや」
エレベーターは一階から上昇をはじめたばかりで、私のいる五階にはまだまだ到着しそうにない。
「どうやって帰るんだ?」
荷物を持ち上げ、梅原課長は苦笑いをした。
最初のコメントを投稿しよう!