甘い失恋

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甘い失恋

「いままでお世話になりました。 ありがとうございました」 あたまを下げると拍手が起きた。 渡された花束を受け取り、職場をあとにする。 今日、私は二年間勤めた派遣先との契約を終えた。 「大変そうだな」 めり込みそうなほどの荷物を肩にかけ、どうにかもらった花束を抱えてエレベーターを待っていたら、梅原(うめはら)課長が私と並んで立った。 「持つよ」 くいっとシルバーの眼鏡を押し上げ、梅原課長は私の腕からトートバッグを取った。 「ありがとうございます」 「いや」 エレベーターは一階から上昇をはじめたばかりで、私のいる五階にはまだまだ到着しそうにない。 「どうやって帰るんだ?」 荷物を持ち上げ、梅原課長は苦笑いをした。
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