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2月10日
平日にびっしり顔を合わせている分、休日に会うのはまれだ。そんなセンパイにわざわざバレンタイン前の週末に私用で呼び出されたのだから、『あらこれバレンタインイベントのフラグ立ってしまったかな。ちょっとばかり甘くてビターな出来事に遭遇してもおかしくない』
なんて期待して気合いを入れてオシャレした自分が腹立たしい。
まあこれもデートと言えなくはないと自分に言い聞かせた。
長い時間を過ごし幾多の試練を乗り越えてきたから、憧れとか親愛の情などを抱いているのは否定出来ない。ふとした拍子にはセンパイの事を考えてしまっている。
恋とか愛と呼ぶにはほんの少しだけ大人になりきれていない感情を自覚はしている。
意を決して顔を上げ、先輩に言い放った。
「センパイは一つ思い違いをしてます」
「ほう、何が」
「バレンタインフェアは決してチョコレートの祭典ではありません。少しでも良いチョコを少しでも安く買おうという女の戦場です。生半可な覚悟じゃ、怪我するぜ」
「ふっ、望むところだ」
バレンタインフェアの会場に着いてはじめのうちセンパイは尻込みしていたが、そんなに奇異の目を向けられないことが分かると生き生きとしだした。
通勤電車の女性専用車両じゃあるまいし、男の人がいたらダメという決まりはない。お客にはパティシエの人もいるし、そもそもここで本命チョコを探すような人には意中のしか目に入らない。
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