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3月13日
年度末に忙しいのは会社員の常としても、残業残業の毎日では身も心も疲れてしまう。そんな私を見かねたのか、自分もサボりたかったのか。
「今日の午後から大岩屋に行くぞ」
そんな取り引き先あったかな。私が首を傾げていると、センパイは続けた。
「前に話していた日本酒の蔵だよ。忘れたか?」
「い、いえいえ覚えてますよ。嬉しいです。でもなんで午後からなんです?」
「現地調査の扱いにしているから、終わったら直帰する」
「この忙しい最中に私たちだけ、そんな素敵でいいんですか」
「この忙しい最中に昼間から酔っ払った女性の部下を連れて戻ってくる方がやばいだろ。それともお前、酒蔵に行って一口も飲まない自信があるのか」
「センパイ、マジ天使です」
「だから今日の予定の仕事、午前中に仕上げておけよ」
「センパイ、マジ悪魔っス」
電車で小一時間。景色に田園が多くなってきた駅で降りた。それから少し歩くと街並みが古めかしくなってくる。
「日本酒が似合いそうな街並みですね」
「ふむ、そんなもんかな。昔から知っているところだから、よく分からんな」
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