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3月13日
「はい、お酒の雑誌で。あと先月『木の風』を飲む機会があったので。お酒呑む時は、どんな人が造っているのかなって想像しながら呑むんです」
「どんな予想だった?聞いてもいい?」
「んと、気を悪くされないでくださいね。きっとこの杜氏は朴訥で、無口でちょっと頑固。でも真剣で優しくて思いやりがあって一途な人と想像してました」
「うちにカメラでもついているのかしら。まさにそのまんまよ」
楓さんは楽しそうに笑う。
「いつも和服なんですか?カッコいいです」
「あら、ありがと。うちの叔母が近所の料亭の女将だから、ちょっとでも暇があると、アルバイトさせられるの。もっとも、今はまだ蔵も小さいから生活費を稼ぐには丁度いいわ」
楓さんが機嫌良さそうなのでちょっと切り込んだ質問をする。
「ずっとご主人の事を覚えていたんですか」
「まさか。小さい時にご近所だっただけで、20年も会ってなかった人よ」
「それでも結婚決めてしまったのですか?」
「あら、蔵の見学って聞いたけど、私への取材なの?たまには女子トークも楽しいわね。お話は蔵の後でね。ほらほら準備。化粧落としてね。帰りに私の道具貸してあげるから。手洗いして白の割烹着に着替えてね。雑菌厳禁なの。お酒造りは赤ちゃん育てるのと同じぐらい気を使うのよ」
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