2月10日

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2月10日

私は疑った。 まず自分の耳を疑った。センパイの言葉の意味分からなくても、取り敢えず日本語として理解はしている。 次に自分の常識を疑う。日頃の言動と日付けから判断して、ちょっと期待しすぎなところはあったが、妥当と言える範囲だろう。 ならば疑うべきはセンパイの言葉そのものだと判断した。 「チョコ食べたいけど、今はどこもかしこもバレンタインフェアで、男の俺が行くと目立ってしまって買えないから、付き添ってくれ」 意味がわからなすぎる。 すごい遠回しのプロポーズか、ウィットに富んだギャグなのか真剣に悩んだ。でもこのセンパイがそんな高度な駆け引きを使えないことは私が一番知っている。 つまりは言葉通りの意味なのだ。 私、田中美春とセンパイの加藤正憲。 私は24歳、センパイは一つ上。大卒で入った会社で教育係兼パートナーのセンパイについて回ってもうすぐ丸2年になる。 センパイのあだ名は『チョコゴリラ』 180ぐらいの身長と、何に使うんだと聞きたくなるぐらい筋肉が付いている。そして男が甘いもの食えるかなんて強がっているけど、チョコ好きなのは関係者の間では有名だ。     
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