祭囃子にはリンゴ飴

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 ◇  意識が覚醒すると、まず感じたのは身体の重さだった。全身に寒気と痺れがあって、瞼を開けることすら怠さを感じる。次いで、鉄の匂いがして、朧気に現状を思い出してきた。  確か……通り魔に襲われそうなアリスを咄嗟に守ろうとしたら、庇う形になって代わりに刺されてしまったんだったか。かなり深く差されたのか、それとも刺さったところが悪かったのかドバドバと血が出たみたいだが、これまでの経験からして、命に別状は無さそうだ。 「どうして……どうして、アンタってやつはいつも……っ」  すぐ近くからアリスの声がする。それと同時に、手の甲に熱を感じた。……泣いているのだろうか。いつもの気丈に振舞う態度からは想像もつかない弱弱しい姿だ。  アリスが泣いている姿を見るのは、これで3回目になるんだろうか。出会って間もない頃に今みたいな状態になったときと、地球に帰ろうとしたとき。そう考えると、アリスを泣かせる原因は、いつも僕なんだなぁ。全く罪な男だぜ。
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