祭囃子にはリンゴ飴

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「ねぇ、アリス」 「……何?」  今さらながら泣き顔を見られたのが恥ずかしいと思い始めたのか、目元をごしごしと裾で拭うと、少し不貞腐れたような態度でこちらを見詰める。 「君は今、幸せ?」  最初、きょとんとした顔で首を傾げていたが、数秒ほど考えると、この言葉の意図することが伝わったのか、口をパクパクさせて驚いていた。「ぁ」とか「ぅ」とか、言葉にならない呻き声をあげたり、せわしない様子で手をバタバタとさせたあと、深く深呼吸して、アリスは大袈裟な笑顔を作った。 「えぇ、幸せよ」  君が魔王を倒したあとの約束は、漸く叶えられた。
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