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「~~っ! 久しぶりだというのに、随分な挨拶ね……?」
ゆっくりと扉を開けると、そこには涙目になりながら頭を押さえている女性がいた。おそらく地毛であろう、染めたようには思えないほど透き通った綺麗な金髪に、宝石のような青い瞳。外国人かハーフなのだろうけれど、発せられた言葉は流暢な日本語だった。
「久しぶり……? と、とにかく本当にゴメン!」
久しぶり、と言われているが、生憎、僕は彼女のことを知らない。この女性は控えめに言っても今まで自分が見た中で一番美人だ。流石に忘れるなんてことはありえないだろう。と、なれば向こうが誰かと勘違いしている可能性が高い。しかし、それが正しいか確かめる余裕なんて今は無い。
「まぁ、アンタが失礼なのは今に始まったことじゃなから、別にいいけれど。……っていうか、何をそんなに慌てているの?」
呆れた顔で溜息を吐く女性。一挙一動が様になっていて、思わず見とれてしまうが、そんなことをしている場合ではないことを思い出す。
「今日は大事なテストがあって、あと2分もしないうちに始まるんだ!」
「……本当にアンタってやつは計画性0ね。私が送っていってあげるから、方角と距離を教えて」
「助かる! あっちに1kmくらいかな。車はどの辺に停めてあるの?」
「クルマ? そんなの私が持っているわけないじゃない?」
「えぇ!? ……あ、もしかして自転車?」
「テレポートよ」
悲報、痛い子だった。
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