ショートケーキは生チョコレート
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ショートケーキは生チョコレート

「おはよう、もう9時よ」 「……おはよう」  9時5分。静寂の中で、針が動く音を5回聞いたのち、挨拶を返す。眠くて頭が回らない。誰だこの美少女…………あぁ、思い出した。アリスだ。何でここに……えぇと、魔力が溜まるまで帰れないとかで、ルームシェアすることになったんだっけか。  微睡の中で状況を整理していく。確か昨日は、誰も部屋にいないのに何故か、おはよう、と呟いて、自分はどうしたんだろうと思っていたら、ダイチから今日はテストだから授業の開始時間が早いと聞いて、慌てて準備をして家を出ようとしたら、家の前に見知らぬ美少女――アリスがいて、魔法で大学まで送ってくれた。うん、意味が分からん。魔法て。  そのあと、家に帰るとアリスがいて、自分が異世界で世界を救っていて、でもその記憶は失っているということを聞いた。それで、異世界で旅をしているときに、一緒に映画を観に行こうと約束をしていたとのことで、映画を観たりして一頻り遊んだあと、解散すると思ったら一緒に住むことになって……。  これを他人が言っていたのなら、小説を読んだまま寝落ちしたのか、とでも嘲笑するのだけれど、事実なのだからしょうがない。周囲を見渡すと、見慣れないものがある。そういえば、アリスがここに住むにあたって必要なものを一通り買ったんだっけか。  一緒に住むとなったとき、金銭的な問題でも大丈夫だろうかと心配したが、アリスが換金用に宝石類を持ってきており、それを売ったので今は結構な金を持っている。それをアリスから貰った時、こんな大金は怖いので持ちたくない、と言って初めは受け取らなかったが、そもそも半分はアンタのモノなんだから、と半ば押し付けられるようにして受け取った。話を聞くと、魔王を倒したときの報奨金の一部らしい。それでも身に覚えのない大金だから、怖いことには変わりないのだけれど。  数日前までは、男子大学生の独り暮らしでイメージされるような、必要最低限の生活用品だけがある殺風景な部屋だったのに、クッションやちょっとした小物が増えている。それでもゴチャっとした印象を受けないのだから、アリスは思いの外インテリアのセンスが良いのだろう。