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そして三つ目……、と話していたら少しずつ沈み始めていた。まだギリギリ薄明かりが届くくらいの深さだ。
順調にいけばあと数分で一気に潜れるだろう。
体全体を柔らかな重みに包まれ、体から緊張が抜けていく。すると一瞬のうちに、先の見えない黒い層が転換して、白っぽいけどわずかに色のついた所についた。
どうやらそこまで無事底にたどり着けたようだ。
底に着くと、道中に感じた重さや密着感はすっかり消え去り、しばらくすると目が慣れてきて風景がほのかに色づいてきた。
みるみると輪郭をはっきりさせていく視界。
自分が今いるのは建物の中、しかも見覚えのある場所だ。近所のデパート・・・いや、知っている景色とはどこか違う。店舗やエスカレーターの配置が違うし、商品は自分より一回りは昔の世代のものだ。
内装も全体的に昭和を感じるし、ところどころ壊れたり汚れたりしている。
やはり地上には存在しない場所のようだ。底では全く珍しいことではない。むしろ地上と寸分違わず存在する場所の方が珍しい。
ここには毎晩来るたびに違う場所が用意されている。今日はたまたまデパートだったというわけだ。
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