思い出と未練と

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 そんな感じでここまで来た。  奈津美は横で寝てる。時間は、もう六時を過ぎてる。随分寝たみたいだ。そろそろ起こさないと、せっかく来たのに、意味がなくなっちゃう。 「奈津美。起きて」 「んんん。寝てないし」 「じゃあせめて瞼上げて」  奈津美がとりあえずのそのそと動き出したから、先に外に出ることにした。  刃物みたいな空気だ。寝起きにはちょうどいいかもしれない。はああ、と視界を白くして、そのまま上を見ると、雲は何処にもない。星が見えるけど、水平線はもう白いし、だいぶ明るい。暗闇を照らす灯台も、そろそろお休みの時間だ。  固まった体をほぐしながら、ゆっくり灯台の方に歩いて行く。後ろから、車のドアが閉まる音が聞こえた。  朝陽を見るなんて、何年振りだろう。  確か、中学生くらいだったかな。あれもやっぱりここで、奈津美と一緒だった。というか、奈津美に連れ回された中で、初めての遠出だ。  夜通し自転車をこいで、今思えば、事故事件にも遭わずに、よく無事にここまでたどり着いたものだ。あの時奈津美のお母さんと家の両親にどれだけ心配かけたことか。そしてどれだけ怒られたことか。  そしてその中で、嬉しそうにしていた奈津美のことを、誰も知らない。僕だけが、帰りの車の中で、泣きはらした目と満足そうな口元を見ている。  それが今じゃ、思いつきで行動しても、ちゃんと準備して、二人で安全に来られてるんだから、大人になった、ってことかな。
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