0人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな感じでここまで来た。
奈津美は横で寝てる。時間は、もう六時を過ぎてる。随分寝たみたいだ。そろそろ起こさないと、せっかく来たのに、意味がなくなっちゃう。
「奈津美。起きて」
「んんん。寝てないし」
「じゃあせめて瞼上げて」
奈津美がとりあえずのそのそと動き出したから、先に外に出ることにした。
刃物みたいな空気だ。寝起きにはちょうどいいかもしれない。はああ、と視界を白くして、そのまま上を見ると、雲は何処にもない。星が見えるけど、水平線はもう白いし、だいぶ明るい。暗闇を照らす灯台も、そろそろお休みの時間だ。
固まった体をほぐしながら、ゆっくり灯台の方に歩いて行く。後ろから、車のドアが閉まる音が聞こえた。
朝陽を見るなんて、何年振りだろう。
確か、中学生くらいだったかな。あれもやっぱりここで、奈津美と一緒だった。というか、奈津美に連れ回された中で、初めての遠出だ。
夜通し自転車をこいで、今思えば、事故事件にも遭わずに、よく無事にここまでたどり着いたものだ。あの時奈津美のお母さんと家の両親にどれだけ心配かけたことか。そしてどれだけ怒られたことか。
そしてその中で、嬉しそうにしていた奈津美のことを、誰も知らない。僕だけが、帰りの車の中で、泣きはらした目と満足そうな口元を見ている。
それが今じゃ、思いつきで行動しても、ちゃんと準備して、二人で安全に来られてるんだから、大人になった、ってことかな。
最初のコメントを投稿しよう!