新築工事

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 わが家が完成しても、まだまだ家よりも空き地の多いその場所は、周りが田畑なこともあり、静かで快適な場所だった。  しばらくは我が家の両脇も空き地だったけど、それから数か月後、隣で新築工事が始まった。  それでも妻は臨月で実家に戻っている時期だったし、俺は日中は仕事でいないから、別に騒音に悩まされることはない。  ただ気になったのは、その物々しい現場だ。周りを高いシートで覆い隠すようにして、中をうかがい知ることが出来ないようになっている。  よほど大きな家を建てるのだろうか。あるいは三階建て以上の高い家なのか。気にはなったけど、まあ完成してからのお楽しみという事にしておこう。  騒音を気にして土日は工事を行わないというのも、サラリーマンにとっては嬉しい事実だった。  新築工事が始まって最初の土曜日、都会とは違う静けさと、暖かく注ぐ陽射しに誘われるようにウトウトしていた俺の元に、その家の居住予定者が訪問してきた。  てっきり大手会社の若社長か、あるいは地元の大地主の息子かなんかだろうと思い込んでいた俺は、その時肩透かしを食らった。  呼び鈴の音に、半分夢心地だった俺は、少し気分が悪くなった。それでも昔からこの街にいる者から見れば、よそ者であることは自覚している。  玄関前で深呼吸して、気持ちを落ち着かせてから扉を開けた。  そこに立っていたのは、七十近いと思われる老夫婦だった。
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