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―・―・―・―
「やっと会えたな……、フォン?」
雨が滝のように降るイタリアの町に、ここに居る筈のない男が立っていた。
雨の所為で視界が悪いのは当たり前であるが、狂気を孕んだその目ははっきりと目視できる。
「何故お前がここにいる……?」
フォンの問いかけに男は濡れた前髪を掻き上げ、ぎらつく眼でフォンを見据える。
「野暮な事を聞くなよ、お前に会いに来たに決まってるだろ?」
「そんな事の為に、大人数で押し掛けて来たのか?」
「なんだ気づいてたのか?
流石だなフォン、感は鈍っていないな。
これなら、いつでも復帰できるぞ」
彼の言葉に、フォンは眉を潜める。
「俺は、ギルドを脱退した。
戻るつもりはない……」
「家族のため、か……?
その家族が居なくなれば、お前は戻ってくるんだろ?」
彼が放った言葉に、血が沸々と沸き上がる。
脳裏にクラリスの姿が、たった1発の銃弾で生死をさ迷っている彼女の姿が浮かぶ。
降り続ける雨の中、1発の銃声音が響く――
目の前に立つ男の頬に、赤い筋がうっすらと浮かび上がる。
己の利き手は、硝煙の登る拳銃を握りしめていた。
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