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「――くそッ!?
こんな非常事態に乱闘しているなんて、何処のバカだ!?」
いまだ止む気配がない雨の中を、璃蓮は顔も知らない馬鹿どもに愚痴を溢しながら目的地へと向かう。
その後ろには、相変わらず不機嫌そうな表情でレンツィアが続いていた。
「この雨……
どこぞの下手くそな水の呪幻術師が発生させた、にしては妙だな……?」
「分析する暇があるなら、足を動かせ……足をッ!!」
「大体、何でお前と仲良く現場に急行しなきゃならないんだ!?
騎士団長サマなら、他の奴等も指名出来ただろッ!?」
「お前が厄介事を持ってきたんだ、最後まで責任を取れッ!!」
目撃証言のあった空き地に近づいてきた事が分かったのは、辺りに満ちた隠す素振りの無い殺気――
レンツィアもそれを感じ取ったのだろう、璃蓮に対して吐いていた暴言を止めていた。
雨音の所為で戦闘を続行しているのかは分からないが、これほどの殺気がこの辺りにまで漂っているのだ。
まだ現場に居るのだろう――
そっと剣の柄に手を乗せ、いつでも抜刀出来るように構える。
いくら警護し慣れたイタリアの町といえど、今日は生憎の雨……
気配を捉えづらく、奇襲をするには最適な環境である。
まぁ、これほどの殺気を見境なく撒き散らしている相手だ、こちらの事など眼中に無いのだろう。
――いささか、厄介な相手かもしれない……
敵はイタリアを攻めてきた訳ではない、もしそうなら既に町中で被害が多発している筈だ。
となると、王家ではない何者かを狙った、若しくは何かしらの問題を発生させる為の犯行と見るべきだ。
それに、ネズミ共は何故発見されるまで気絶していたのだ?
謎が謎を呼ぶばかりであり、一向に敵の狙いが見えてこない。
敵の狙いはいったい何なんだ……?
そんな疑問を抱きながら、璃蓮は乱闘が目撃された現場に踏み込んだ。
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