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イタリアを守護する騎士団長の立場ならば、あの危険人物を追うべき、なのだろう。
しかし璃蓮個人は、腕の中でぐったりとしているフォンを優先した。
「――おいッ!!
しっかりしろ、フォンッ!!」
脈を測ってみるが、弱々しくこれでは確かめられない。
改めて、ボロボロになった彼を見つめる。
ずっと雨の中で闘っていたのだろう、服は水を含みずっしりと重たく、泥で汚れていた。
左腕は右と比べて少し長く、脱臼しているのは一目瞭然。
更に左を犠牲にしながら戦っていたのか、所々赤黒くなっており骨折もしているだろう。
ふいに、死んだように気絶していたフォンの瞼がうっすらと開く。
「……リ、リレ……
――――ッ!?」
フォンが何かを言おうとして激しく咳き込む、すると口から源泉の様に血が溢れ出た。
恐らく何処かの内蔵を潰されたのだろう、息苦しそうな彼の姿に、璃蓮は言葉も出ない。
しかし、満身創痍である彼の何処に力があったのか、動く右手で璃蓮の服を掴んできた。
「……た、たの……む……
…クラ……リス…を…」
「――安心しろ、既にクラリスは保護されている。
今は王家管轄の病院に、そばには雪華もいるッ!!」
この場に居ない妻の事が気がかりだったのか、フォンは璃蓮にクラリスの事を伝えようとして来た。
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