24人が本棚に入れています
本棚に追加
第2章 旅路の始まり
第2章 旅路の始まり
16歳の高1になった僕は夏休みを利用して東京から山形へひとり旅をした。気儘な1人旅などという呑気なほどでもない。
ヨーロッパをあてどもなく彷徨(さまよ)っていた彫刻家?の父が故郷の山形にアトリエを作った。だから夏は山形に来い、という有無も言わさぬ電話だった。きっと後妻の百合子さんでも紹介したいのだろう。
もう1年以上も会っていないし、東京の方が楽しいに決まっている。それに受験が終わって遊びたい盛り。だから気が進まない。
母は母で東京を離れどこかの避暑地で画家の手伝いをしている。きっと新しいパートナーを見つけた、とか言って帰ってくるであろうことは想像がついた。
勝手気ままな両親だ。
離婚したら堰を切ったように、このザマだ。
*
走りだした汽車はガラガラだというのに、カメラを持った青年が向かい合う木製のシートの向かいに座って、
「キミ、どこから来たの? 知っているかな、この客車もうすぐ引退になるんだよ、こうして走っている客車に乗れるのもあと少し、貴重だよねー」と声をかけてきた。
「はい、そうですか。ぼくば1人でいたいんで、違うところに座ってくれますか?」と僕は言った。
最初のコメントを投稿しよう!