第2章 旅路の始まり

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第2章 旅路の始まり

第2章  旅路の始まり 16歳の高1になった僕は夏休みを利用して東京から山形へひとり旅をした。気儘な1人旅などという呑気なほどでもない。 ヨーロッパをあてどもなく彷徨(さまよ)っていた彫刻家?の父が故郷の山形にアトリエを作った。だから夏は山形に来い、という有無も言わさぬ電話だった。きっと後妻の百合子さんでも紹介したいのだろう。 もう1年以上も会っていないし、東京の方が楽しいに決まっている。それに受験が終わって遊びたい盛り。だから気が進まない。 母は母で東京を離れどこかの避暑地で画家の手伝いをしている。きっと新しいパートナーを見つけた、とか言って帰ってくるであろうことは想像がついた。 勝手気ままな両親だ。 離婚したら堰を切ったように、このザマだ。     * 走りだした汽車はガラガラだというのに、カメラを持った青年が向かい合う木製のシートの向かいに座って、 「キミ、どこから来たの? 知っているかな、この客車もうすぐ引退になるんだよ、こうして走っている客車に乗れるのもあと少し、貴重だよねー」と声をかけてきた。 「はい、そうですか。ぼくば1人でいたいんで、違うところに座ってくれますか?」と僕は言った。     
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