一章

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喉が渇いたので、家に帰る前にコンビニに寄っておつかいに行かせた。チルドカップのカフェオレをぶら下げた彼女が「お待たせー」と言いながら車に戻って来た時、目が釘付けになる。 彼女が口元を指差していたずらっぽく笑った。 「さっきの、付けてみちゃった。紘くんは今日で見納めだね」 店で試していた時は、少しだけ禍々しいと思ったのに。今は色が抑えられてちょうど良く色香が唇に乗っている。 ゴクリ、と唾を呑みそのまま後ろ頭を引き寄せる。強く唇を合わせた後、俺の顔を見た彼女が噴き出した。 「やっぱり、デートの時は付けない方がいいね」 「だから言っただろうが」 彼女が差し出したティッシュで口を拭うと、そのティッシュには真っ赤な俺の熱が鮮やかに映し出されていた。
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