一章

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「ほら、可愛いじゃん。赤リップ」 可愛くないことはないんだが。 「こっちにしない?」 俺は三回めに試した桜色のリップを指差す。 「でもさ、そっちはあんまり色が出なかったじゃん。似た色持ってるし」 「プレゼントして差し上げたらいかがでしょう?」 またお姉さんがいらんことを言う。 「うん、くれるんなら使う。そして私は赤リップ買う」 それでは意味がない。 「まぁ、お前がいいならその気に入ったやつにすれば」 「うん、じゃあお姉さん。レッドの425番で」 「かしこまりました、ご用意しますね」 お姉さんの「結局買ってやらないのかよ」というオーラをひしひしと感じる。世の中はそんなに彼女に甘い彼氏ばっかりじゃないんだぞ。
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