一章

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帰りの車の中、助手席に座る彼女はご機嫌だ。 「付き合ってくれてありがとう、春だし新しい口紅欲しかったんだよね」 「たまにはな」 いつもはあんまり彼女の買い物には付き合わないが、今日は俺もショッピングモールに用事があったのだ。 「ところでさ、(ひろ)くんは赤リップ嫌いなの? 確かに男ウケは悪い色だよね」 「女の化粧なんてどうでも良いよ」 俺の目に可愛く映れば、目元やほおはどうでも構わない。 「じゃあなんで口出したの、服とかは何買っても文句言わないのに」 少しくらい自分で考えろ。俺は仕方なく濁しながら言う。
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