一章

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「……赤い口紅は、色が移るだろ」 未花は俺を「面倒くさい男だなぁ」とでも言いたげに半開きの目で俺を見る。 「何を今更。コップとかは洗うし良いじゃん」 なんで、察せないんだ、馬鹿なのか。 「……俺の唇に移る……」 恥ずかしい。なんでこんなことをわざわざ言わなければならないのか。 あぁ、と彼女は納得した後、鏡越しにニタァーっとムカつく笑みを見せる。 「そぉだよねー、移っちゃうよねー、カキ氷のイチゴ味食べたみたいになるよねー」 「っるっさいな」 「じゃあ、今日買ったリップはデートの時は付けないよ」 俺はしたり顔の彼女を横目で睨んだ。 「そうしてくれ」
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