翔太とさとみの出会い

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 おばあちゃんはいつの間にかだれもお客のいないお店の中にもどって小さなイスにこしかけてぶつぶつ何かつぶやいていた。よほど驚いたのだろう。  翔太も最初は心臓が飛び出るくらいびっくりしたけど、さとみのかわいさに楽しくなっていろんな話をし続けた。どれくらい話をしたのだろう。だいぶ長い間話していたのかもしれない。  気づくとおばあちゃんは、こっくりこっくり頭を上下ゆらして居眠りをしていた。そのおばあちゃんの寝顔をオレンジ色の夕陽が照らしていた。  いつの間にか夕暮れ時になっていた。 「さとみちゃん、ぼく、もう帰るね。お母さんが心配しているといけないから」 「そっか、帰っちゃうのか」  さとみの顔は今にも雨が降ってきそうなくらい暗くなっていた。翔太は「ごめんね、明日また来るからさ」とつぶやいて空きカンを白ネコにたくすと、走り出した。背後から白ネコの鳴き声が微かに聞こえてきた。チラッとだけ後ろを振り返ると、大きくなってゆらめきながらしずむ夕陽を背にして白ネコがしっぽをゆらせていた。  また会いに来るからね。そう思って家に向かってかけていく。なんとなく胸の奥がチクリと痛んでいた。なぜだかわからないけど。 ***
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