希望を信じて

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 教室の窓ガラスをビタビタとたたきつけるような大雨が降っていた。翔太は駄菓子屋の裏にいたさとみと白ネコのことが気になって授業に集中できずにいた。  さとみも白ネコもずぶ濡れになっているかもしれない。だいじょうぶかな。どこかで雨宿り出来ていたらいいけど。寒くてカゼをひいてしまうかも。雨、止んでくれないかな。 「こら、翔太くん。よそ見をしない」 「あっ、ごめんなさい先生」  翔太は思わず立ってしまい、教室に笑い声が響く。苦笑いを浮かべて翔太は頭をかいた。 「みんな、静かに。それじゃあ、翔太くん。この漢字を読んでごらんなさい」  黒板には『希望』と書かれていた。 「えーと、たしか、そのー……」  後ろの席から伸一が翔太の背中をつついてこっそり正解を教えた。 「『きぼう』です。先生」 「はい、よくできました。伸一くん」 「先生、ぼくは翔太です」 「伸一くんに答えを教えてもらったでしょ。だからいいのよ」  美智子先生はすべてお見通しだった。翔太は照れくさそうにしてボリボリ頭をかいて席にすわった。なにをしているのだかと翔太ははずかしい気持ちでいっぱいになった。  キーンコーンカーンコーン。 「あら、もうおしまいの時間なの。早いわねぇ」  美智子先生はお別れのあいさつをして教室を出ていく。今日の授業はすべて終わった。翔太は待っていましたとばかりにさっさと帰りじたくをすませ伸一を見た。 「伸一、悪いけどちょっと気になることがあるから先に帰るな。それじゃ明日」 「おう、じゃあな」  伸一の返事を聞くと、翔太はろうかへと飛び出した。ぞろぞろ歩いているみんなのすき間をぬうようにして(もう)スピードで走りぬけていく。翔太は下駄箱でクツにはきかえ空を見上げた。雨が止む気配はない。頭の中には寒さに震えるさとみと白ネコの姿でいっぱいになる。  早く行かなきゃ。  翔太はカサもささずに外に飛び出すと雨のカーテンの中へとかけ込んだ。もちろん、行先は駄菓子屋の裏の空き地だ。 *
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