希望を信じて

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「フニャー」  白ネコが大きなあくびをしてグゥーッと伸びをすると、こっちに目を向けてトコトコ歩いてきた。そのとき、白ネコはビクッとして足を止めた。白ネコの目が急にするどくなりキョロキョロと警戒しているように落ちつきをなくした。見えない何かにおびえるようにして空きカンをくわえてサササッと足早に外に飛び出していってしまった。 「あっ、どうしたの」  翔太が言い終わる前に白ネコの姿は見えなくなっていた。とつぜんのことに翔太は訳がわからずにいた。空を見上げるとさっきまで降り続いていた雨はすっかりあがっていた。そんなことよりも追いかけなきゃ。  翔太は白ネコを追いかけて駄菓子屋の外へと飛び出した。白ネコはどこにもいない。そのかわり翔太のほほを針でつきさすような冷たい風が通り過ぎていった。 「翔太、だいじょうぶ?」  翔太は聞き覚えのある優しい声が聞こえ向きを変える。お母さんだった。後ろから居眠りをしていたおばあちゃんも起きて出てきて翔太のお母さんにぬれた服をわたしていた。 「おばあさん、あとで翔太の来ている服、返しにきますからね」 「いつでもかまわないからね」  おばあちゃんは夕陽が目に入ったのか目を細めてまぶしそうにしていた。翔太はぶかぶかのズボンをずり上げながらお母さんの手に引かれて帰った。ふと空き地のほうに目を向けると白ネコが駄菓子屋裏から顔だけぴょこんと出していた。あんなのところにいたのか。   あっ、行っちゃった。  いったい、白ネコはどこへ向かったのだろう。そのとき、雲の切れ間からまん丸なオレンジ色の夕陽を真っ二つに切りさくような黒いすじが地上へと走った。なんだか胸の奥がズキリとした。なぜかはわからないけど、さとみの身になにか起きるのではないかと思えてしまった。 *
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