希望を信じて

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 ゴゴン、ガラッ。  ああ、もう。この戸は直さないのだろうか。開けるだけで(つか)れてしまう。  翔太は駄菓子屋の開きにくくなった戸に体重をかけて押すようにして思いっきり開けると、「おばあちゃん、おばあちゃん」と叫んだ。  おばあちゃんはまた居眠りをしていたようで寝ぼけた顔をしていた。 「んっ、翔太か。どうしたんだね、そんな大きな声を出して」 「白ネコさん、知らない?」 「白ネコ? そういや、見ていないね。何かあったのかい」 「うん、わからないけど何か大変なことが起ころうとしているような気がするんだ」 「大変なことねぇ」  そのとき、翔太の背中がゾクゾクとした。 「今の話、私にも聞かせてくれないかね」  翔太が振り向くと、黒い帽子をかぶり黒いスーツを着て、黒いクツをはいたおじさんがいた。そのおじさんの顔は近くにいるのになぜかはっきりしない。まるでカゲみたいだ。でも、目だけが異様に光って見えて不気味だ。  あれ、このおじさんって。まちがいない。 「あっ、昨日のおじさんだ」 「おや、どこかで会ったかな」  この黒ずくめのおじさんは昨日自分とすれ違ったことを(おぼ)えていないようだ。おじさんが一歩近づいてきた。そのとたん、冷たい風が首すじを通り過ぎていった。なんで、どうして。  翔太はこのおじさんがなぜかこの世のものでないような気がしてきた。あの目、雰囲気。見れば見るほど震えが込み上げてくる。
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