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「ぼうや、君はこの子を知っているね」
翔太は突き出された一枚の写真に目を移した。そこに写っていたのはさとみだった。どうしてさとみのことを知っているのだろう。なんだか寒気がしてきた。
「ぼく、知らないよ」
翔太はとっさにウソをついた。なんとなくこのおじさんには何も言ってはいけないような気がした。
「ぼうや、ウソはいけないね。さっき、白ネコがどうのと言っていたじゃないか」
「うん、ぼく、ネコが好きだからさ。おばあちゃんとネコの話をしていただけだよ。それに、白ネコとこの女の子と何の関係があるの」
翔太はこわい思いを気づかれまいと精一杯強がって話した。
「じゃあ、話を変えよう。白ネコをどこで見たんだね。白ネコにもちょっと用事がるんだがねぇ」
「この裏の空き地だったかな。でも、もういないよ」
「その白ネコは、何か変わったところがなかったかい」
「そんなこと、わからないよ」
黒ずくめのおじさんは目をギラッと光らせて翔太をにらみつけた。翔太は足をガタガタ震わせた。おじさんの目、こわい。あっ、この目……。昨日だけでなくその前にも見たような気がする。どこでだろう。
「あんたはいったい何者だい。どうしてその子をさがしているんだい」
おばあちゃんが翔太をかくまうように後ろにやり、見たことのないようなきつい目つきでおじさんに言い寄った。
「それは言えない。ただこの子をさがさないと仕事にならないんでね」
「仕事だって、探偵か何かかい」
「さあ、どうだか」
黒ずくめのおじさんはそう言うと、ぼうしを深くかぶり直して帰って行った。翔太は帰って行くおじさんを駄菓子屋の薄汚れた半開きの戸からのぞき見ていた。
えっ、ウソでしょ。翔太は身震いして戸にしがみついた。
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