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「翔太、ごめんな。みつけられなくて」
「ううん、伸一くんのせいじゃないよ。伸一くんはがんばってくれたもん。それだけで十分だよ」
「おまえは優しいな。でも、黒ずくめのおじさんにさとみちゃんと白ネコがつかまってないといいんだけどな」
「そうだね。それだけが気がかりだよ。だいじょうぶかなぁ」
もうあたりは暗くなりはじめところどころで家の明かりがもれていた。楽しそうな笑い声も聞こえてくる。さとみはひとりぼっちでいるかもしれない。ううん、きっと白ネコがいる。だいじょうぶだ。
「さあ、翔太。今日は帰ろう。暗くなる前にさ」
「うん」
翔太は服についた土手の芝生をはらいのけて立ち上がると伸一といっしょにとぼとぼ帰って行った。一瞬翔太は背筋が寒くなった。もしかしたら後ろに黒いカゲがいたのかもしれない。振り返ることができなくて本当にいたのかはわからないけどそう思えた。
翔太は必死で黒いカゲの存在を否定した。だいじょうぶ、いるわけがない。なのに声が聞こえてしまった。
「あの子たちもどうやらさとみの居場所を知らないようだな。早く連れていかねばならんというのに……。だが、あの翔太という少年の心のかがやきはあなどれない。私には、まぶしすぎてたまらん。近ごろではめずらしいくらい素直な心を持った子供だな。さとみはあいつに救われるかもしれんな。ふふふ、まあよいわ。それはそれでよしとせねばな……」
どういうこと。
翔太には意味がわからなかった。『心のかがやき』って……。自分の胸元をじっとみつめてみた。やっぱり光なんてない。さとみも同じようなこと言っていた。なんだか頭が混乱してきた。
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