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ああ、もうわけがわからない。
翔太は黒ずくめのおじさんを思い浮かべてブルッと身体を震わせた。どう考えても悪い人だ。悪魔とかかもしれない。けど、本当にそうだろうか。
なんとなく悪い人じゃないような気もしてきた。いや、あいつはさとみをねらう悪い奴だ。
翔太はこわい気持ちをおしのけて後ろに目を向けた。
黒ずくめのおじさんが空気のぬけた風船のようにシュルシュルシュルと音をたてて縮まっていく姿が目に映った。
あっ、まただ。
うごめく黒いカゲとなっていく。そう思った瞬間、暗闇の穴の中が開き消え去った。その向こう側に見える景色は、沈みゆく夕陽とともに空にキラキラ一番星がまたたいていた。
翔太は一番星をながめながらこの前授業で習った『希望』という言葉を思い出した。いつかきっと、みんなで輪になって遊ぶ日が来ると信じて再び歩き出す。
『さとみちゃんと白ネコはぼくが守らなきゃ』
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