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「俺、足を怪我しててさ、ナキ、助けに行けなくてごめん。酷い目に遭ったんだよな?」
「ううん、ロタスが生きていてくれただけで僕は嬉しいよ。でも、どうしてそんなに色んなことに詳しいの?」
「そいつは俺の仲間でモタカーメルの船員だからな。猫じゃらしもそいつのだ」
ロタスに尋ねたはずだったのに、答えたのはアキークだった。
「え!」
驚きのあまり開いた口が塞がらなくなった。でも、船に僕に合う丁度いいサイズの服があったのも納得が行く。
「ロタス、アルカマル側の人間だったの?」
「どちら側は無いかな、何でも屋だからね」
「噂流したのもそいつだ」
なんだか機嫌が悪いのか、ぶっきら棒にアキークが言う。手紙鳥の片方はロタスが受け取ってたんだ。
「ナキ、髪切っちまったんだな。綺麗な長い髪だったのに」
そう言って、ロタスは僕の短くなってしまった襟足の髪に触れた。
「ちゃんとロタスに貰った髪飾りは持ってるよ?」
ずっと持っていた髪飾りを僕はズボンのポケットから取り出した。どうしても城から逃げる時に置いて行くことが出来なかったものだ。もしかしたら、ロタスが生きてることをこの髪飾りが教えてくれていたのかもしれない。
「おい、あんまりベタベタするな。ナキ、お前の家はここか?」
突然、腕を掴まれ僕はアキークに引き寄せられた。
「そ、そうですけど……」
「ロタス、お前は先に船に戻ってろ」
「へえ、ふーん、船長、ナキのことが好きなんだー?」
「喧しいぞ!」
豹は獅子のように咆哮はしないと聞いていたけれど、アキークはニヤニヤと笑みを浮かべるロタスに向かってライオンみたいに吼えた。
「おー、こわこわ。それじゃあ、またな、ナキ」
僕が手を振ろうとした時には既にロタスは僕に背を向けていた。アキークは怒ると怖いのだろうか?
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