7月 part2

3/4
前へ
/193ページ
次へ
「オーナーは、初めからこの〈クイーン〉を、自分のお店の看板メニューにするつもりだったんでしょう。 だからあえて、ベースは、どのバーにもあるホワイトラムの銘柄、『バカルディ』を使ったんでしょうね。有名すぎる銘柄だからこそ、絶版になることもないし、味にムラがでることもない。 そして、さらに味に深みを出すために、『バカルディ』に、ラムの別銘柄である、『ハバナ3年』を加えています。比率は、おそらくバカルディ45mlに、ハバナ3年を1tspくらい。 そして、オレンジキュラソーと共に、微量ながらオレンジビターズも入れています。オレンジの果汁も入っているので、このへんは季節によって比率を変えているんでしょう。 デコレーションも、よりオレンジの香りが楽しめるように工夫されています。 よく考えられていますよね。深みのある味を出しながら、なおかつお客様に安定してご提供できる。いろんな意味で最高のカクテルだと思います」  笑顔を崩さず、さらさらと語る七星。 「…なんで、そんなことが分かる?」  戸惑いながら俺は尋ねる。そんな話、入店して四年になろうとしている俺でも聞いたことはない。 「ああ。オーナーの〈クイーン〉は、入店祝いに飲ませてもらいましたからね。覚えていました。ここと、ここで」  七星は自分の鼻を指差し、次に自分の舌を出して指差す。  …まさか、こいつ…!
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!

748人が本棚に入れています
本棚に追加