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「オーナーは、初めからこの〈クイーン〉を、自分のお店の看板メニューにするつもりだったんでしょう。
だからあえて、ベースは、どのバーにもあるホワイトラムの銘柄、『バカルディ』を使ったんでしょうね。有名すぎる銘柄だからこそ、絶版になることもないし、味にムラがでることもない。
そして、さらに味に深みを出すために、『バカルディ』に、ラムの別銘柄である、『ハバナ3年』を加えています。比率は、おそらくバカルディ45mlに、ハバナ3年を1tspくらい。
そして、オレンジキュラソーと共に、微量ながらオレンジビターズも入れています。オレンジの果汁も入っているので、このへんは季節によって比率を変えているんでしょう。
デコレーションも、よりオレンジの香りが楽しめるように工夫されています。
よく考えられていますよね。深みのある味を出しながら、なおかつお客様に安定してご提供できる。いろんな意味で最高のカクテルだと思います」
笑顔を崩さず、さらさらと語る七星。
「…なんで、そんなことが分かる?」
戸惑いながら俺は尋ねる。そんな話、入店して四年になろうとしている俺でも聞いたことはない。
「ああ。オーナーの〈クイーン〉は、入店祝いに飲ませてもらいましたからね。覚えていました。ここと、ここで」
七星は自分の鼻を指差し、次に自分の舌を出して指差す。
…まさか、こいつ…!
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