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6月 part1
空の涙が、街の灯りを幻想的に魅せる夜。
(先程ご案内したお客様、随分若いな…。二十代前半ってとこかな)
男女のカップル。フォーマル、というわけではないが、二人とも気合の入ったデート服だ。あまりこういう場所に来ることはないのだろう。緊張している様子がこちらにまで伝わってくる。
男性が、ポケットから紺色の箱を取り出し、開きながら女性に差し出す。
指輪だ。
「僕と、結婚してください」
「はい…」
なるほど。やっぱりそういうことか。
ドライジン、ポートワイン、チェリーブランデー、オレンジジュース。
2:2:1:1の割合で、それぞれ分量をメジャーカップで測り、2cm角の氷とともに、シェイカーに入れる。シェイカーを身体に引きつけ、上に振り、また身体に引きつけ、今度は下に振る。繰り返すこと32回。カクテルグラスに静かに注ぐ。
ルビーのような美しい色のカクテルをお盆に載せ、恭しく運んでいく。
「失礼致します。こちら、〈ウエディング・ベル・スイート〉というカクテルでございます。
お二人の門出を祝い、私どもからの心ばかりのサービスです。もし宜しければ、お召し上がりください」
女性は目を潤ませながら微笑んでいる。男性も照れくさそうに笑っている。こういう瞬間に立ち会えるのが、この仕事の一番の醍醐味かもしれない。
乾杯する二人を見ながら、一旦下がる。
タイミングを見計いながら、今度は二人のお好みのカクテルを提供するべく、俺は準備を始めた。
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