749人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうだ、拓叶くん。久しぶりに、エリートバーテンダーカクテルコンペで優勝した、君の創作カクテルが飲みたいな。彼女の分も頼む。ぜひ彼女にも、君のカクテルを飲ませてあげたくて」
「かしこまりました」
俺はカウンターに立つ。
シェイカーに氷と水を入れ、氷の角を取り、水だけを捨てる。ウォッカ、アップルリキュール、クランベリージュースを、3:1:1の割合で入れる。さらに、すりおろしたりんごとライム果汁を加える。
シャカシャカとシェイクし、静かにカクテルグラスに注ぐ。
扇型に切ったライムと、フローズンクランベリーをカクテルピンに刺し、飾りつければ完成だ。
俺、月城 拓叶の創作カクテル〈NEW TOKYO〉。
オーナーの〈クイーン〉には遠く及ばないが、一応、俺なりにこだわって作っている。
例えば、ウォッカは果物の風味を生かすため、癖の少ない『フィンランディア』を使っている。アップルリキュールで甘みを、クランベリージュースで酸味を加味し、バランスのよい味に仕上げている。果物の風味をより感じてもらうため、生のりんごとライムを加えている。試行錯誤のすえにたどり着いたオリジナルカクテルだ。
だから、藤沢さんがこれを注文してくれるのがすごく嬉しい。ふわふわと弾むような心を隠して、恭しく銀のトレーに載せて運んでいく。
最初のコメントを投稿しよう!