8月 part 2

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 …いた!  片付けを終え、私服に着替え、従業員の通用口から帰ろうとしていた七星の後ろ姿を捉え、左腕を掴む。そのまま七星の身体を右に引っ張り、こちらを向かせる。  七星はこちらを見ない。ずっと下を向いている。 「オーナーに聞いたよ。藤沢さん、睡眠薬かなにか混入してたんだって? そんで、おまえはそれに気づいて止めてくれたんだよな。それならそうと、なんで言ってくれなかったんだ」  七星はぶつかりそうな程、勢いよく顔をあげた。  メガネの奥の七星の目を見て、俺は言葉を失った。  …泣いてる? 「だって、あのお客…、月城さんの大切な作品に、変な薬を入れやがったんですよ! 月城さん、あんなにカクテルに対して真剣で…、あのカクテルも気持ちを込めて作ってて…、なのにあいつは…。 僕、悔しくて………っ!」  七星はそこまで言うと、ぎゅっと唇を固く結び、また下を向く。その目から大粒の涙がいくつも零れ落ちていく。  なんで泣いてんだよ。泣くなよ…。  それじゃまるで、まるで…。  俺のために怒って、俺のために泣いてるみたいじゃねえかよ…。
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