8月 part 2

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「…なあ七星。それでもお客様を殴るなんて、バーテンダー失格だよ。 だから俺がおまえを鍛えなおしてやる。閉店後、俺と一緒にここに残れよ。おまえの根性、叩き直してやるから。 そのかわりおまえの舌を使って、俺のカクテルの問題点や課題を教えてくれ。 おまえは俺の、俺はおまえのライバルだ。…ってのは嫌か?」  ああもう、なんで俺はこんな言い方しかできないんだ。  まずは謝らないと。それからお礼を言わないと。つうか、凡人の俺とライバルなんて、おこがましいよな。  恐る恐る七星を見て…俺は思わず息を飲んだ。  七星はほおに涙の筋を残したまま、喜びを隠しきれないというように微笑んでいた。  下がった眉。細めた目。口角を上げ、唇の隙間から僅かに見える白い歯。まるで火が灯ったように上気したほお。メガネの奥の七星の瞳が、まだ残る涙で潤んできらきらと輝いている。  俺の右手を両手で包み込んで、七星は言う。 「嬉しいです。一緒に頑張りましょう、月城さん」 「…拓叶、でいいよ。月城さんなんて他人行儀だし」  目を逸らして言う俺の耳に、七星の声が届く。 「はい。拓叶さん」
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