8月 part 3

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「す、すみません、拓叶さん。ああっ落ち込まないで! 膝を抱えないで! 床に『の』の字を書かないで! 拓叶さんっ!」  落ち込みから復活したところで、七星はこほんと咳払いして解説してくれた。 「…あのですね、まず、ベースとなるジンは、冷凍してあるものを使ってください。ジンのようにアルコール度数が高いお酒は、冷凍しても凍りませんから。冷凍した方が、一口目のキリッとした感触を感じられます。 で、ベースとなるジンと一緒に、糖分が添加された『オールドトム・ジン』を加えてみてください。冷凍のジンの味の固さを和らげてくれます」  ジンやウォッカが冷凍しても凍らないってのは常識だが、そこにオールドトム・ジンを加えるという発想はなかった。思わず聴き入ってしまう。 「作るときには、まずジンだけを入れてステアしてください。ポイントは空気を含ませることです。そのあとベルモットを入れて、またステアしてみてください。ステアの回数も増やしてみましょう。だいぶ味が変わると思いますけど」  俺は呆然とする。…こいつ、やっぱりすげえ…。  こうして2月の店内コンペに向けての、夜中の特訓が始まった。
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