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「紹介制…。じゃあ、最初の顧客はどうやって見つけたんですか?」
紹介制のバーでネックになるのは、最初の顧客を発見できるかどうかだ。一介のバーテンダーが、どうやって有名人と知り合う機会を得られたんだろう。興味がある。
山本さんが答えるより早く、七星が口を挟んだ。
「山本さんの奥様はね、元アイドルなんですよ。ユニット名は『イブニング娘。』っていうんですけど」
「えっ、マジ⁉」
イブニング娘。俺が小学生の頃にデビューし、今なおメンバーを変えながら存続している国民的アイドルグループだ。
「奥様のお名前、お聞きしてもいいですか?」
山本さんは照れ臭そうに答えてくれた。
「うん。当時は、後藤 真矢って名前でね。元々は幼馴染だったんだよ。ずいぶん前に芸能界を卒業したから、若い人は知らないかもしれないね」
「いや知ってます!マジですか!ごっちん!?」
なつかしい。なっち派かごっちん派か、よく友人と議論したものだ。数年前、一般人と結婚したというニュースが流れたが。…初めて見たぞ、そういう一般人。
なるほど、奥様の人脈から、この会員制のバーは始まっているわけか。
「羨ましいです! ごっちんと結婚なんて!
ああ、俺もアイドルと結婚したいなぁ。誰かかわいいアイドルが、バー・アンベリールにも来てくれねえかなぁ!」
つい口に出てしまった、俺の心の叫び。
…あれ。七星がすっげえ冷たい目で見てる。
「どうした?」
「べーつーにー。なんでもないですー」
珍しく、ふてくされた態度でカクテルを口にする七星。カウンターの向こうで大笑いする山本さん。
…なんだ? 浅はかな考えだって呆れてんのか?
まあ、その通りだけど。
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