おいしいカクテルのつくりかた

９月 part ３-３

　二人でなんとか非常階段を降り、人通りの多い場所に出た。歩道の隅で、七星は俺の手首を縛っている縄をほどこうとしていた。

「なんだこれ、全然ほどけない…。拓叶さん、ちょっと待ってて…」

　どこかに行こうとする七星。そのシャツを指先で掴み、倒れてしまった。冷たいアスファルトの感触が身体に伝わる。ハアハアと荒く息をする俺を見て、七星の顔色が変わった。

「拓叶さん、まさか…、何か変なものを飲まされ…」

　息があがる。身体が熱い。さっきまで理性で抑え込んでいた分、性欲の叫びが大きくなったような気がする。あまりの情けなさに涙が滲むが、そんなこと気にする余裕もない。肩で息をしながら、俺は七星を見上げた。

「……七星……、助けて……」

　七星が目を丸くする。ごくり、と唾を飲み込む。

　そして七星は、俺の首と膝下に腕を入れ、俺を抱え上げると、すぐ近くのラブホテルへと入っていった。