6月 part1

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 在籍する10人のバーテンダーのうち、今回有力視されているのは、俺と同い年の影山 聖哉(かげやま せいや)。  だが去年、28歳以下の若手の登竜門『エリート・バーテンダー・カクテル・コンペティション』関東大会で、俺は聖哉を負かし、グランプリを手にした。追い風が吹いている。負ける気はしない。 「そうだ、月城。来週から新人が来るから、面倒見てやってくれ」    オーナーの言葉に、俺は困惑する。 「新人…この時期にですか?」 「ああ。五年前にここから独立した山本から、ぜひここに入れて欲しいと頼まれてな。経験は、チェーン店の居酒屋で8ヶ月、山本の店で半年なんだが、面白いやつだよ。頼むな、月城」  俺はさらに困惑する。  俺は短大卒業後、錦糸町の小さなバーで2年、八重洲のバーで3年働き、やっとこのバー・アンベリールのスタッフとなる事ができた。なのに…。 (チェーン店の居酒屋で8ヶ月、バーの経験はたった半年? …それだけで、オーナーに認められた? どんなやつなんだ、それ…)
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