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なんだか、メガネの奥の七星の目に疲れが見える。少し充血しているような。
「…おまえ、ちゃんと寝たのかよ?」
「僕は大丈夫ですよ。
それより拓叶さん。男二人でラブホから出るの、嫌でしょ?
僕、先に出て、あのバーに置きっぱなしの拓叶さんのバッグ、取り返して来ますね」
「…ひとりで大丈夫なのか」
「大丈夫ですよ。山本さんにも来てもらいますから。そもそもここを拓叶さんに紹介したの、山本さんですし。責任、取ってもらいますから。
ホテル代は払ってますから、もう少し休んでてください。あ、でも12時過ぎたら延滞料かかるんで、気をつけてくださいね。
じゃ、また仕事の時にバッグ返しますから」
七星は俺にミネラルウォーターを渡し、自分の財布から紙幣を何枚か抜いて近くのテーブルに置く。そして俺に向かって微笑み、手を振った。
静かに足音が移動し、オートロックの扉が閉まる音がした。
俺はベッドから上半身を起こし、ミネラルウォーターを飲む。冷たい水が、喉の奥を通り抜けていく。
そして思い出す。夜中の七星のことを。七星がしてくれたことを。七星の手や口の感触を。
「………!」
誰も見ていないのに、俺は掛け布団をたぐりよせ、下半身を隠した。
…な、なんだ、まだ媚薬が残ってんのか、俺。もうちょい休もうかな…。
何故だか鼓動が高まる胸を押さえ、赤く熱を持った顔を隠すように、俺は掛け布団を頭まで被り、布団に潜り込んだ。
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