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6月 part2
「櫻宮 七星(さくらみや ななせ)です。よろしくお願いします」
皆の前で右手を左胸にあて、深く頭を下げる新人。
「あなたが、月城 拓叶さんですね。ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします」
細くてストレートなブラウンの髪。楕円形のメガネをかけているからか、全体的に文学青年のような印象。背は俺より少し低いくらいか。
23歳と言っていたが、高校生と言っても通用するかもしれない。まるで、背伸びしてバーテンダーの衣装を着ているようだ。
こいつが期待の新人、なのか?
それにしては、威厳がなさすぎるような…。
「おい櫻宮!姿勢が崩れてる!常に体幹を意識して立て!お客様にだらけた姿を見せる気か!」
あーあ、期待の新人さん、さっそくオーナーにどやされてる。
俺は、七星の様子をこっそり観察する。
グラスの拭き方を見ると、基本は分かっているようだ。だが、バイトに毛が生えた程度の動き。そんなバーテンダーなどいくらでもいる。
何かの受賞経験があるわけでもない。有名店で働いていたわけでもない。経験年数が長いわけでもない。なぜオーナーがこいつを買いかぶっているのか分からない。
…ま、いいや。俺の敵でないのなら。
店内コンペで俺の邪魔をしないなら、どうでもいい。興味がない。
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